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2015年のe-Estonia

2015年02月19日

エストニアでは、インターネットアクセスは一般的に基本的人権の一つと考えられており、法体系もそれを前提に電子社会に適応させてきています。例えば、2000年には電子署名法が成立し、2002年より運用が始まりました。この法律によって、デジタル署名が紙の書類への署名と同等の法的効力を持つことになりました。その結果、「インターネットがあればどこにいても署名できる」を実現し、官庁、議会、学校、企業、病院など、あらゆる場面で手続きの効率がアップしました。

世界的にみても先端的な電子社会を実現しているエストニアですが、デジタル署名の他にはどのようなサービスがあるのでしょうか。e-Estonia.comという政府機関の公式サイトで、その代表的なサービスを紹介しています。

components
e-Estonia 主要コンポーネンツ

これから数回に渡り、これらのサービスを見ていきたいと思います。
今回は、その中でも全てのサービスの前提となっているツール、「IDカード・デジタルIDカード・モバイルID」について見ていきましょう。

IDカードの種類

IDカード

15歳以上のエストニア国民と永住者は、IDカードを持つことが義務付けられているカード。本人の写真がプリントされ、電子社会に暮らすエストニア国民にとって不可欠な大変重要なカード。

IDカード
写真:sk.ee
Digi-IDカード

仕事の現場いでは、電子署名や各種サービスへのログインが頻繁に必要となる職務の方が多数おられます。そのようなシーンが多ければ、大切なIDカードの破損、紛失、盗難などのリスクも増えます。その際、リスクを軽減するために、機能限定版のIDカードとして、Digi-IDカード(有料)をIDカードとは別に持つことができます。 Digi-IDカードは、写真がプリントされておらず、目視による確認ができないため、身分証明証としての機能はありません。 あくまでも、電子署名やログインなど、オンラインでの使用に限定されています。

モバイルID

Digi-IDカードと同様の機能を持ち、携帯電話のSIMカードと一体化したモバイルID(有料)もIDカードと併用することができます。
モバイルIDは、カードリーダー不要、インターネットアクセス不要、SMSと同様に携帯電話の回線のみでOKです。端末もスマホに限らず、従来の携帯電話でも使えます。エストニアの国外にいても、ローミングの電波さえ入れば使えるので、個人的にもモバイルIDを併用しています。
申し込みと受け取りは、IDカードを持参して、携帯キャリアのショップで行います。

モバイルID
写真:id.ee
短期居住者カード

エストニアの短期居住許可を持つ外国人に対して発行されます。基本的にIDカードと同じ機能を持ちますが、アクセスできるサービスに一部制限されます。

電子居住者(e-Resident)カード

2014年12月にスタートした新制度。非居住者の外国人を対象に発行されます。取得には特別な条件はなく、受付窓口でパスポート、写真、必要書類へを提出し、フィンガープリントの採取と50ユーロの手数料を支払えば申請完了。約2週間のバックグランドチェックの後、問題なければカードを受け取れます。

2015年1月現在、エストニア国内の窓口のみ受付及び受け取り可能。2015年春頃には、各国大使館で申請・受け取りができるように準備中。

機能は、電子署名、電子処方箋の受け取り、ビジネス関連の電子政府サービスへのアクセスに限られています。
また、居住許可が与えられるわけではないため、日本人の場合、e-Residentカードを持っていても、シェンゲン協定で定められた90日を越えて滞在することはできません。
e-resident cardの写真はこちら:Postimees

IDカードの使い方

デジタル署名やオンラインバンキングを使用する際には、二つの暗証番号を用います。暗唱番号はIDカードの所有者が任意に変更できます。また、いずれの暗唱番号も、3回間違うとロックされます。
PINコード1
4桁から12桁の暗証番号で、主に各種サービスのログインに使用します。
PINコード2
5桁から12桁の暗証番号で、デジタル署名に使用します。手書きの署名と法的に同等の効力を持ちます。

ここで、実際にモバイルIDを使っている様子を動画で見てみましょう。

カードタイプ別の機能

IDカードは、タイプによってアクセスできるサービスが異なります。参考までに、代表的なサービスへのアクセスの可否について比較しました。

カードタイプ

以上、エストニアのIDカードについてご紹介しました。
次回は、電子署名について見ていきたいと思います。

ページ下部に過去記事のリストがあります。